第11回 IchigoJam BASICによるプログラミングカリキュラムの解説
東京都の小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。学校現場をはなれた今も、自ら会社をつくり、自治体や民間企業と連携してプログラミング教育の普及に取り組まれています。
この連載では、これまでプログラミングの授業を実践してきた松田孝さんが見てきた「プログラミング教育によって変わる子どもたちの姿」や、元校長だから分かる「学校が抱える課題とその解決策」「大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の最新情報」など、役立つ情報が満載!
今からプログラミングの授業をはじめたい先生方やプログラミング教育に関心がある保護者の方、必読です。

上図は前回紹介した初学者向けのIchigoJam BASICの導入と展開カリキュラム案です。
このカリキュラムの一番のポイントは、プログラミングの知識(コマンド)と技能を指導者側が一方的に教えるのではなく、探究課題として例示してあるプログラムを子どもたちがプチ探究的に体験しながら、結果として掲示してある知識(コマンド)や技能を自ずと獲得することにあります。 例として、上記の図の中学年の探究課題をめぐる子どもたちの様子についてお話しします。「滝」と題されたアニメーションプログラムは、プログラム行から命令行に移行した最初のプログラミング体験となります。

「滝」は上記のような4行のプログラムですが、低学年でのプログラミング体験を踏まえて、子どもたちにこのプログラムを読ませてみます。
まずは「PRINT」コマンドの意味を伝えて、実行すれば” ”(ダブルコーテーション)で囲んだ@ が表示されることを確認します。
次にプログラムの実行順序を考えさせます。このプログラムは10→20→30→40と移行して、40の「GOTO 10」コマンドで行番号10へ戻ることを確認します(命令行によるLチカプログラムで既習事項)。
そしてこのプログラムがいつまで続くかを子どもたちに改めて問い、これは無限ループであり、コンピュータは疲れたり飽きたりせずに、プログラムを実行し続けることを伝えます。これこそがコンピュータの最も重要な特質であることを理解させ、この後に「RUN」実行したらどうなるかを予想させるのです。またこの時に、「コンピュータは作成されたプログラムを高速で実行(処理)する」ことも必ず伝えます。
「RUN」実行した瞬間、子どもたちの多くは「おっ〜!」という声をあげます。 この反応を受けて「やってごらん」と促すと、子どもたちは意欲的に写経を始め、すぐさま”@”の@を別の文字に変更したり、自分なりのアイディアを試したりし始めます。
以下に、実際に子どもが作成したプログラム事例を紹介しますので、是非皆さんも子どもたちのプログラムをコピーして、試してみてください。子どもたちの発想の素晴らしさを共体験でき、彼らの大いなる可能性を感じることになるはずです。


松田孝さん
合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
小金井市立前原小学校・元校長
東京学芸大学教育学部卒業。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、指導室長をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019 年3月に辞職、4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。総務省地域情報化アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員としてICTで教育に革命を起こすべく日々奔走。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』『IchigoJamでできるプログラミングの授業』(くもん出版)がある。
