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【連載】プログラミングで子どもたちの未来をあと押し:第10回

第10回 IchigoJam BASICによるプログラミングカリキュラムの基本的な考え方

東京都の小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。学校現場をはなれた今も、自ら会社をつくり、自治体や民間企業と連携してプログラミング教育の普及に取り組まれています。

この連載では、これまでプログラミングの授業を実践してきた松田孝さんが見てきた「プログラミング教育によって変わる子どもたちの姿」や、元校長だから分かる「学校が抱える課題とその解決策」「大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の最新情報」など、役立つ情報が満載!

今からプログラミングの授業をはじめたい先生方やプログラミング教育に関心がある保護者の方、必読です。

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この連載の第3回では、IchigojJam BASICを使ったテキストプログラミング初学者(子どもたち)に対する導入の実践事例を紹介しました。

まずはIchigoJam WEB(https://fukuno.jig.jp/app/IchigoJam/)を開いて、プログラミングスペースに「BEEP」コマンドを直接入力してEnter キーを押すだけで、コンピュータが音を鳴らして反応します。このインタラクティブな体験が子どもたちにプログラミングへの興味・関心を抱かせ、テキストプログラミングへ誘うきっかけとなるのです。

 「BEEP」コマンドの次は、「PLAY」コマンドを使って音階を奏でます。短い曲であれば、簡単なメロディをすぐに作成する子どもたちも出てきます

続いて、「LED」コマンドを教えます。LED1と入力しEnterキーを押せば、プログラミングスペースの縁が赤く点灯し、LED0で消灯します。「:」コマンドや「WAIT」コマンドを組み合わせることで、いわゆるLチカ(ライトの点滅)プログラムも作成できます。

このプログラム作成では、特殊文字を含めたキーボード入力に慣れさせると同時に、あまりに長いプログラムを実行しようとすると「Too long line」というエラーメッセージが出ることを体験します。これをきっかけに、Lチカプログラムの作成に向けて行番号を使った命令行によるプログラミングに移行するのです。

IchigoJam BASICのプログラミングカリキュラムは、筆者の経験上、まずは直接コマンドを入力するプログラム作成から始めると良いと考えます。そしてプログラミング行によるLチカプログラムを作成する際に表示される「Too long line」というエラーメッセージをきかっけに、行番号を使った命令行のプログラム作成へ移行することが、子どもたちにとっても納得いくプロセスであり、必然でもあると考えます。

最後に提示してある表は、プログラミング行による音や光による聴覚と視覚に訴えるインタラクティブ性から、命令行によるアニメーションづくりへと移行するカリキュラムとなっています。

さらにこのカリキュラムでは命令行によるアニメーションづくりでテキスト入力の基本的な知識(コマンド)や技能を身に付けながら、次第にゲームプログラミングに移行していきます。ゲームプログラムは、確かに最初子どもたちはその面白さに惹かれますが、アニメーションプログラムと比べ難度が高く、要素も複雑です。

そのため、まずはアニメーションプログラミングでプログラミングの知識(コマンド)と技能をある程度身に付けて、その理解をさらに深めるためにゲームプログラミングに移行することが、子どもたちがコンピュータとのコミュニケーションを通じて、コンピュータサイエンスへの興味・関心を深める貴重な体験となるのです。

次回以降はこのカリキュラム案のポイントを詳しくご紹介します。

松田(まつだ)(たかし)さん

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
小金井市立前原小学校・元校長

東京学芸大学教育学部卒業。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、指導室長をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019 年3月に辞職、4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。総務省地域情報化アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員としてICTで教育に革命を起こすべく日々奔走。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』『IchigoJamでできるプログラミングの授業』(くもん出版)がある。