第9回 大学入学共通テストの独自表記を分析IchigoJam BASICで表記する(問3:後半)
東京都の小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。学校現場をはなれた今も、自ら会社をつくり、自治体や民間企業と連携してプログラミング教育の普及に取り組まれています。
この連載では、これまでプログラミングの授業を実践してきた松田孝さんが見てきた「プログラミング教育によって変わる子どもたちの姿」や、元校長だから分かる「学校が抱える課題とその解決策」「大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の最新情報」など、役立つ情報が満載!
今からプログラミングの授業をはじめたい先生方やプログラミング教育に関心がある保護者の方、必読です。
問3の分析(後半)(※第1段落見出し)
前回は、下図プログラムの行番号(05)で工芸品を1としたシミュレーションを行いましたが、今回はそれに引き続き工芸品2についても同様の思考操作を行い、プログラム理解を深めていきたいと思います。


行番号(05)で工芸品2を設定します。
行番号(06)はそのままで、行番号(07)もまずは変数buin(部員)に2を代入します。そして行番号(08)で、Akibi[2]<Akibi[1]の検証を行うのですが、工芸品1のプログラム処理で、部員1の空き日は「5」に更新されていることが極めて重要となります。つまりここでは1<5となり、これは真となりますので、行番号(09)で変数Tantou(担当)が変数buinn(部員)の2に上書きされるのです。そしてプログラムは行番号(07)に戻ります。
今度は変数buin(部員)に3を代入することになります。行番号(08)は、Akibi[3]<Akibi[2](つまり1<1)となって、これは偽ですので行番号(09)は実行されずにプログラムは行番号(10)に移行するのです。
行番号(10)は、工芸品1の思考操作で以下のプログラムとなりましたので、そこに値を代入していきます。「工芸品2(kougeihin)…部員2(tantou):1(Akibi[tantou])日目〜1(Akibi[tantou]+Nissu[kougeihinn]-1)日目」を表示するのです。工芸品2の製作日数が1日ですので、製作期間は1日目から1日目となります。
そして行番号(11)で部員2の空き日の更新を行います。部員2が工芸品2を1日かけて製作しますから新たな空き日は2日目となるのです。
問3の独自表記を分析し、IchigoJam BASICで表記する
入試問題のプログラム表記はあくまでも入試の公平性を担保するために作られた独自のものであり、実際の実行環境は存在しません。ですからプログラムの正しさを確認するためには、今回も行ったような思考操作を繰り返すしか方途がないのです。しかし、もし実行できる環境があれば、試行錯誤を通じてプログラミン
グの世界観を深く理解することが可能になります。そこで登場するのがIchigoJam BASIC言語であり、入試独自のプログラム表記は、IchigoJam BASIC でほぼ同じ基本処理に置き換えることが可能であることは既にお伝えしている通りです。
第3問のプログラムをIchigoJam BASICで置き換えたプログラム(※第7回連載で紹介 PCN上田斉藤氏作成)が以下であり、それをRUN時実行すれば、「各工芸品の担当と期間を一覧」表示することができるのです。
筆者は、小学校段階からIchigoJam BASICのテキストプログラミング体験を重ねることで、プログラミング特有の構文やコマンド(命令語)に対する抵抗感や違和感を減らし、受験準備の負担を軽減できると考えています。子どもたちのキャリア形成において大学入試は大きなイベントです。これから入試に挑むことを考えている子どもたち、そして保護者の方々には是非、IchigoJam BASICでのプログラミング体験をお勧めします !!


上記プログラムにおいて、行番号10の工芸品の製作日数を示した配列LETの添字が11となっていることに気付かれたでしょうか。これは行番号30においても空き日の配列が定義されているため、添字を1として
行番号30と同じにしてしまうことができないための対処であり、そのために行番号100及び110のプログラムでは工芸品の製作日数が配列の値と対応できるように10を加えたプログラムになっているのです。
以上で2025年度の大学入学共通テスト「情報」で出題されたプログラム問題の解説を終了します。次回は、読者の皆様にはIchigoJam BASICのプログラムを体験し、より一層プログラミングに興味を持っていただくためのカリキュラムやその具体についてお話をしますので、ご期待ください。
松田孝さん
合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
小金井市立前原小学校・元校長
東京学芸大学教育学部卒業。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、指導室長をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019 年3月に辞職、4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。総務省地域情報化アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員としてICTで教育に革命を起こすべく日々奔走。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』『IchigoJamでできるプログラミングの授業』(くもん出版)がある。
