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【連載】プログラミングで子どもたちの未来をあと押し:第8回

第8回 大学入学共通テストの独自表記を分析IchigoJam BASICで表記する(問3:前半)

東京都の小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。学校現場をはなれた今も、自ら会社をつくり、自治体や民間企業と連携してプログラミング教育の普及に取り組まれています。

この連載では、これまでプログラミングの授業を実践してきた松田孝さんが見てきた「プログラミング教育によって変わる子どもたちの姿」や、元校長だから分かる「学校が抱える課題とその解決策」「大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の最新情報」など、役立つ情報が満載!

今からプログラミングの授業をはじめたい先生方やプログラミング教育に関心がある保護者の方、必読です。

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問3の分析(前半)(※第1段落見出し)

問3の問題は、問2の「次に割り当てる工芸品の担当部員を表示するプログラム」問題を踏まえて、「各工芸品の担当と期間を一覧表示」するプログラムの穴埋め問題です。問題文にはこのプログラムを作成するための考え方が説明されており、最後には下図のプログラムが提示されています。

さて穴埋め問題となっている行番号(05)の空欄ケとコ、(10)の空欄サ、(11)の空欄シについては、プログラム作成の考え方とプログラムを対比させて考え、解答群(下図)の中から適切に選択することになります。

行番号(01)は「工芸品1から9までの製作にかかる日数を配列で示したもの」、行番号(02)は「工芸品の総数は9つであること」、行番号(03)は「各部員の空き日を示す配列で、初日においてはいずれの部員も空き日であることから全員に1が設定されていること」、行番号(04)で「その部員数が3名であること」が全て文章で記述され、同時にプログラム表記されているのです。

まず行番号(05)の空欄ケ及びコについて考えてみます。

それぞれの工芸品の作成については、「各部員の空き日を比較しながら空き日が最小となる部員を担当者として設定する」のですから、まずは工芸品1から9までを順番に比較検討することになります。当たり前の処理ですが、それを正確にプログラム表記するのがプログラミング基本の作法なのです。このように考えれば、ケはkougeihin(工芸品)であり、コはその総数であるkougeihinsu(工芸品数)となることがわかります。

そして(06)から(09)までのプログラムは、問2で出題された「次に割り当てる工芸品の担当部員を表示するプログラム」がそのまま援用されています。

ここで、行番号(05)で工芸品1を設定し、その後の思考操作を行ってみます。

行番号(06)はそのままで、行番号(07)ではまず変数buin(部員)に2を代入します。となれば行番号(08)は、Akibi[2]<Akibi[1](つまり1<1)となり、これは偽ですので、行番号(09)は実行されずに、プログラムは行番号(07)に戻ります。

今度は変数buin(部員)に3を代入することになります。となれば行番号(08)は、Akibi[3]<Akibi[1](つまり1<1)となり、これも偽ですので行番号(09)は実行されずにプログラムは行番号(10)に移行します。

行番号(10)は、「工芸品及びその担当者と製作期間を表示するプログラム」です。つまりここでは、「工芸品1(kougeihin)…部員1(tantou):1(Akibi[tantou])日目〜・・日目」を表示するのです。製作期間の最終日の・・は工芸品1の製作日数が4日と定められているので最終日が4日目となります。「Akibi[tantou]+サ」の合計の数を「4」とするためにこのサに解答群の中から何を選択すれば良いのかを考えることになります。

工芸品1の製作においては、その製作日数をそのままサとしてしまえば、ここではAkibi[tantou]の1が加わって合計が5となってしまいます。したがって工芸品の製作日数から1を引いておく必要があり、このサは、「Nissu[kougeihin]-1」となるのです。

そして行番号(11)は部員1の空き日の更新を行うプログラムです。部員1が工芸品1を4日かけて製作しますから新たな空き日は5日目となります。Akibi[tantou]を更新するには最初の空き日に工芸品1の製作日数を加えれば良いことが分かります。ですので空欄シは、Nissu[kougeihin]となるのです。

次回の連載では、問3の分析(後半)に続きます。

松田(まつだ)(たかし)さん

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
小金井市立前原小学校・元校長

東京学芸大学教育学部卒業。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、指導室長をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019 年3月に辞職、4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。総務省地域情報化アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員としてICTで教育に革命を起こすべく日々奔走。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』『IchigoJamでできるプログラミングの授業』(くもん出版)がある。