2005年3月18日
『未来を拓く君たちへ』著者のメッセージ

いま、我々は、子供たちに、いかなる生き方を語るべきか。この問いを自らの問いとして受け止め、真摯に考えるならば、我々自身の「生き方」が変わります。著者である田坂広志さんからのメッセージをお届けします。
田坂広志さん
いかなる時代においても力強く生きる力を子供たちに身につけさせてあげたい。それは、子供を持つ方々ならば、誰もが抱く願いです。しかし、では「生きる力」とは何でしょうか。それは、教育の世界でしばしば語られる「体育」「知育」「徳育」だけで育むことはできないものです。人生を「山登り」に喩えるならば、体育によって山に登るための「健康」や「体力」を身につけ、知育によって山登りの「知識」や「智恵」を学び、徳育によって山登りの仲間との「協調」や「共感」の力を身につけさせてあげたとしても、それだけでは、本当の「生きる力」を身につけることはできません。なぜならば、人生という山登りにおいて最も大切なものは、「どのようにして山に登るか」(how)ではなく「なぜ山に登るか」(why)だからです。「どのようにして生きるか」ではなく「なぜ生きるか」だからです。その意味での「生き方」を子供たちに伝えることができなければ、本当の意味での「生きる力」を身につけさせてあげることはできないでしょう。
例えば、我々大人は、子供たちからこうした問いを投げかけられたとき、どのように答えるでしょうか。
「大人は、人生の成功と勝利をめざして生きよというけれど、人生は成功できるとはかぎらないではないか。人生には、必ず勝者と敗者が生まれるではないか。そして、大人の中にも、成功も勝利もできず失敗と敗北の人生を歩む人が、数多くいるではないか。では、僕たちは、この人生で何をめざして生きれば良いのか」
「周りを見渡すと、自分よりも恵まれた境遇の人々ばかりだ。自分は、家も豊かではないし、才能にも恵まれず、不運な境遇に生まれてしまった。こんな不平等な人生を、なぜ一生懸命に生きなければならないのか」
「人類の歴史を振り返ると、5千年経っても戦争も貧困も差別も無くならない。そして、地球環境問題やテロの問題をはじめ、世界の状況は年々悪化している。人類とは、結局、愚かな存在ではないか。こんな希望の無い時代を、なぜ、生きなければならないのか」
こうした人生の問いに対して、いま、我々は、子供たちに、いかなる「生き方」を語るべきなのでしょうか。
そのことを多くの大人の方々に考えていただきたいと思い、この本を書きました。そして、もし、我々大人が、この問いを自らの問いとして受け止め、真摯に考えるならば、我々自身の「生き方」が変わります。そして、大人が変われば、子供たちが変わり、我々の未来が変わります。
その思いと願いを込め、この本を書きました。
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