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2008年3月3日

Vol.32『おでんさむらい ―しらたきのまき― 』

さくら お花見 おだんご おでん……!? 大人気『おでんさむらい』第2弾が発売されます。へんてこ時代劇の魅力を内田麟太先生に語っていただきました。

文:内田麟太郎
絵:西村繁男

ひらた・おでん名前由来記   内田麟太郎   


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今回の敵“ようかい どくぐも”は手ごわいぞ!!
かぶへいあやうし……。

 女優の沢口靖子さんと内田さんはお友だちですか?と、ときどき聞かれる。これは、ビミョーな問題だから、うかつには答えられない。
 その靖子さんとおぼしき方に、
 「おでんさむらいの、おでんという名前はどこからきたの?」と、たずねられた。
 「‥‥机竜之助」
 わたしは小声になった。

 なにも隠すことではないけれども、パクリという文字がちらちらしたのだろう。いうまでもなく、机竜之助は『大菩薩峠』の主人公である。書いた人は中里介山。わたしの住んでいる羽村市が生地で、立派なお墓も禅林寺にある。世界一長い小説とかそうでないとかで、文庫本で二十冊になるらしい(つまり、わたしはまだ読んでおりません)。その介山が主人公の名前をつけるとき、身近にあった机から、机竜之助としたというのを思い出した。
 (ふーん、身近なね。なるほど)
 その日、わが家の食卓には、あたたかくおでんの湯気が立っていた。おでんは平田さんからのいただきものです。

 ― ひらたおでん。
 「そうなの」
 靖子さんはくすっとわらった。
 「それで漢字ではどう書くの?」
 「平田雄伝」
 「つまんない」
 「じゃ、平田御伝」
 「‥‥‥‥」
 だまっている靖子さんはとてもコワイ。
 「じゃ、平田小伝」
 「いいわね」
 靖子さんはにっこりうなずいたけど、すぐにすねた目でわたしをにらんだ。
 「おみっちゃんは?」
 「‥‥ミツバチ」
 「ミツバチ?」
 「隠密」
 「隠密?」
 「島津久光」
 わたしは頭がくらくらしてしゃがみこんだ。

著者プロフィール

作家:内田麟太郎
福岡県生まれ。主な著書に『ともだちや』(偕成社)はじめ、『かたちのおしゃべり』『いろいろあってね』(くもん出版)などがある。

画家:西村繁男
高知県生まれ。主な著書に、内田氏との共著『がたごとがたごと』(童心社)をはじめ、『おふろやさん』(福音館書店)などがある。

 そのとき、電話が鳴った。西村繁男さんからだ。西村さんの声は大きい。
 「おみっちゃんて、内田さんの初恋の人でしょ。森下光子さん。そうだよね」
 靖子さんはだまって聞いている。

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